当園では、食べ物(トリーツ、オヤツ)を使って目に誘導するアイコンタクトは行っておりません。
理由ですが、今まで出来ていた行動が出来なくなると、その行動が一時的に増えていく傾向、または望ましくない行動が一時的に増えていく傾向があるからです。
または、目を見る行動が強化されすぎてしまっていて本来起こすべき行動が取れないといった可能性もあります。
目を見る事以外利益がないと言った感じでしょうか。
ドッグトレーニングの入門書や少し古い行動分析学が書かれている本等では行動の強化や行動をなくす事までは書いてありますが、それ以降の事までは書いてないので、これを意識しているトレーナーさんが、まだまだ少ないのが現状となっています。
人間の例でいうと、普通は自動販売機ではお金を入れて(キャッシュレスになってきていますが…)ボタンを押すと飲み物が出てきますが自動販売機でボタンを押しても出なかった時、ボタンをバチバチと何回も押すことになりストレスになります。
望ましくない行動としては、販売機を蹴っ飛ばすような事もあるでしょう。
他によくある例では、過去に子どもが、店頭で見て欲しいものを買い与えてしまったために次の機会に買ってほしいのに買ってくれないと次回から「買って買って」と泣きながら座り込んでしまうアレになってきます。
これが、どう関係してくるかといいますと…
食べ物を眉間に見せたアイコンタクトは、非常に簡単であり覚えやすいですが、日常の生活では全く必要ありません。
覚えやすい代わりに、この目を見るといった現象がおきやすく、食べ物を持っただけで持っている人の目を「オヤツちょうだい!」と、ジッと見て催促するようになる例が非常に多くあります。
食べ物を貰えないと、もちろんストレスになります。
何気ないトレーニングがストレスを起こしてしまっています。
最終的には望ましくない行動として要求吠え等にも繋がることもあるでしょう。
常に食べ物が与えられる状態ならストレスではないかも知れませんが…
さらに、もらえたりもらえなかったりすることでギャンブル効果のようなものもあり、目を見ることがさらに強化される場合もあります。
食べ物を持たなくても、食べ物が欲しい時に目を見てくる子もいるので、私達も非常に対応が難しくなります。
対応としましては、じっと目を見てきましたら、そのままあげずに食べ物を少しだけ投げて自分で探してもらったり、トリック等の違う行動に移すということになります。
そのトレーニングを推奨された子がノーズワークをやった時に、「鼻を使って探すより目を見れば貰えるんでしょう」と言わんばかりに目をみてきて動かないケースもあります。
そうすると、他の行動を自分から起こさず飼い主の目を見ることが正解になっていたので、目を見ることが非常多くなり、犬本来の行動を変えてしまっていることになる上、自発的に動く事が必要と考えていますので、いいトレーニングとは言えなくなっているので当園では行いません。
いわゆる「トリーツ待ち」「指示待ち」といわれるもので、自ら行動が起こせなくなる現象が起きています。
さらに犬同士は本来、目と目が合う事がとても苦手なのですが、アイコンタクトを強化しすぎてしまった為、本来の行動を変えてしまったために、犬の目を見ることに抵抗がなくなってしまう場合も出てしまっています。
鼻挨拶は、正面から目が合ってしまうのであまり望ましくないのですが、なんの抵抗もなく鼻挨拶をして小競り合いになってしまうケースも出ています。
人の目と犬の目を区別できていればいいのですが、区別できないケースがありますので推奨できないトレーニングとしています。
もう1つ、愛犬の体調がすぐれない時、または違う要求の時等にこちらを見て訴えているのか、トレーニングによって強化された事でこちらをジーっと見ているのかわかりにくくもなります。
本来の行動を変えてしまうのは動物の5つの自由のうち、本来の行動が出来る自由に反することになります。
なお、食べ物を使ったアイコンタクトとは別の事ですが行動を消す事はできる限り避けるべき手法になりますので無視をさせたり我慢をさせる方法も推奨していません。
フードボウルにご飯を入れて、いつまでも待たせるのもフードアグレッシヴ(ガウガウしてしまったり噛みつきに繋がることも)に繋がることがよくある事例になりますね。
行動を消すのではなく、行動の選択を推奨しています。
自然に、こちらを見たい子は見てね…といったかんじにお任せしています(^^)
また、動物福祉の5つの自由の1つである本来の行動が取れる自由、5つの領域による行動表現の真逆のことを変えてしまっているとも考えられます。
古いトレーニング方法であって、犬満たしにならず、重ねて書きますが当園では行いませんので、よろしくお願いいたします。